various wordのfuhさんに、
ベータカロチンのキャラで、カロチン発足祝いに
小説と絵をかいていただきました!
仲間たちが元気に動いてて萌えます!><///
本当にありがとうございますvv

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 最近よく夢を見る。それは、とても悲しくて、寂しくて、 そして、必ずいつか来るであろう悪夢だ。


 『ΩandΑ


「……よく降るね……」
 そう言い、レッドはうんざりした顔で、曇った窓ガラスを袖で拭き、
夜のように暗い外を眺める。
 昨日まで暑いくらいに日が照っていたというのに、昨夜からどこからともなく
黒く厚い雨雲が流れてきて、とうとう今日は土砂降りになってしまった。
「こーゆう日は、パトロール行きたくねえなぁ……」
「それは感心しませんね、先輩」
 ぼそっと呟いただけなのに、すぐさまホワイトから反論がきた。
「こんな雨の日だからこそ、パトロールをする意味があると思います。
 雨で道が滑りやすくなってるから、怪我人が増えるかもしれませんしね」
 この新入りは、爽やかな笑顔を向け、子供に話しかけるような穏やかな口調で説得してくる。
 赤いチャイナのような私服の上に半透明の雨ガッパをはおり、
手には紺色の懐中電灯を握っている。
「たっく……相変わらず真面目なこった……でも、こんな日くれぇ……」
「なんでさ?行こうよピンク」
 声のほうに振り向くと、雨ガッパ姿で、ホワイト同じ懐中電灯を手に持ち、
木のハシゴと何重にも束ねてある縄を担ぎ、
中にヒグマが一匹詰まってるのかというくらいにパンパンの、 リュックを背負ったグリーンがいた。
「こりゃまた……重装備だな……」
「だって、今日雨だけじゃなくて風もけっこうあるからさ……。
 木の枝が折れてたり、花が倒れていたりしたら……そう思うと、心配で心配でさ」
 明るい顔でそう言いながらも、荷物が多いせいか、リュックが重すぎるせいか、
さっきから足元がおぼつかなく、前へ後ろへ右へ左へ、ずっとフラフラしている。
「オレにとっちゃ、お前がそのカッコでこの雨の中へ出ていくほうが心配なんだが……」
「ピンク君……人には、例え危険でもやらねばならないことがあるんだな!」
 ずっと部屋の隅で何やらゴソゴソしていたイエローも、
オレとグリーンの間に割って入り、口をはさんできた。
「たっく、皆して説得かよ!……って、お前も、何そのカッコ……」
 おさげとメガネの美少女キャラの絵がプリントされたTシャツを、
黄色一色のベータカロチンの制服の上から着たイエローも、
(もちろんグリーンのほどではないが)大きなリュックを背負い、
折りたたまれた寝袋を小脇に抱えている。
 イエローの明るく浮かれた顔を見る限り、どうやら、いやあからさまに、
パトロールに行くわけではないらしい。
「何って、コレはボクの籠城セッツ!!なんだな〜。明日はあずきたんの新作ゲーム、
 『あずきとドキドキ!!学園生活〜ハプニング!?学園祭偏〜』の発売日なんだな〜!
 このシリーズの新作発売は、実に一年ぶりなんだなっ!
 それに、初回特典限定の猫耳メイドverのあずきたんフィギュアを手に入れるためにも、
 今日から店頭に並ばなきゃならないんだな!!」
「ちょっ……待て待て!!パトロールは…」
「それよりもあずきたんなんだな」
 即答された。
「おいイエロー……お前、少しはこのチームの発足者としての責任感とか……」
 オレが全て言い切る前に、このオタクは
「待っててなんだな〜!あずきたん!!」
とか何とか言って、その巨体を揺さぶりスキップしつつ、出ていってしまった。


「……人の話聞けよ……」
 イエローが出てったドアを一瞥してから、部屋の中を見渡す。
イエローがくどくどとゲームの説明している間に、結局皆パトロールに行ってしまったらしい。
広い部屋の中にはオレと、まだ窓の外をぼーっと眺めているレッドしか居なかった。
「……珍しいな。一番真面目なお前が行かないなんて……」
 声をかけると、レッドは我にかえってオレのほうに振り向いた。
「え?……ああ、今日はちょっと、ブルーの看護でもしてようかなって……」
 そう言って、レッドは手を上に突き出して背伸びしながら、ゆっくりこっちに歩いてくる。
「何だ?ブルーがまた倒れたのか?」
「いや、そこまで体調ひどくないけど、今日は低気圧だから気分が悪いんだって。
 がんばってここまでは来たけど、着いた途端ダウンしちゃって……。
 今個室で休んでるとこ。まあ、ちょっと休めばすぐよくなるでしょ」
 そう言いながら、レッドがオレの横をゆっくり通り過ぎる。
その顔は、いつものように明るく微笑んでいるが、疲れの色は隠せていない。
「……お前まで倒れるんじゃねーぞ」
 意表をつかれたように、レッドは一瞬ギクッとした顔をして振り返った。
が、すぐにまたいつもの明るい笑顔に戻った。
「うん……自分で言うのもなんだけど、最近少し肩に力入れすぎたかな……。
 また前みたいに風邪で倒れるわけにはいかないもんね……」
 そう言いながら、レッドはオレの前に向き直り、オレの目を真っ直ぐ見る。
「……心配してくれてありがとね、ピンク!
 なんか、ピンクにはいつも支えられてばっかだね」
 ……面と向かって笑顔でそう言われると、なんとなく照れくさい。
「さ、支えるなんてもんじゃねーよ!!ただ、リーダーが不在じゃ話にならないってだけだっ」
 少しドギマギした言い方になってしまったが、レッドはそれに気づかない。
「大丈夫!!もうあんなバカな真似しないからさ!」
 そして一息いれてから、レッドは明るく言った。
「これからもずっとよろしくね、ピンク!」


 そんな何気ない、明るい一言を聞いた瞬間、
ずっと忘れようとしていた、あの"夢"が、急に記憶の底から這い上がってきた。
あの、悲しくて、寂しくて、いつか必ず正夢になってしまうだろう悪夢が。
「…………」
 オレは、すぐに返事ができなかった。
「……どうしたの?怖い顔して……
 ずっとここにいるのは……やだ?」
 何か気に障ることでも言ったかと、
レッドが八の字眉毛の心配そうな顔をしてオレの顔を見る。
「いや、そうじゃねぇ……なんでもねぇよ……」
「ホントに?なら……いいんだけど……」
 そう言いつつも、レッドの顔はすっかり暗くなってしまった。


 そうだ、本当なんでもないことなんだ。
こんなどうしようもない事を、いちいち気にしていたらきりがない。
 ……だが……。


 しばらくの間、重苦しい沈黙が続いた。
やっとのことで沈黙を破ったのは、レッドのほうだった。
「……よーし、今日もがんばるぞ!!
 ブルーのとこに行く前に、まずは久しぶりに大掃除だ!!」
 レッドはガッツポーズをしてそう一喝し、部屋の隅のロッカーへ勢いよく駆け出す。


 ……本当に、どうしようもない事だ。
……だけど、たまにどうしようもなく不安になる。


 聞くか聞くまいか、少し迷って、そして決心してから、
ロッカーからほうきやらバケツやらをひっぱり出して、床に並べていくレッドのそばに行く。
「……あのよ、レッド」
「ん……何?」
 レッドは、少し無理をして作った笑顔で答える。
 またほんの少し迷ってから、言った。
「お前……もしベータカロチンが無くなったらどうする?」
「……へ……?」
 いきなり考えてもみなかった質問をされて、レッドは少し呆けた顔をした。
「例えば……もう続けられなくなっちまったとか、誰かか『もう終りにしよう』とか言ったりとか、
 そうなったらお前、どうすんだ?」
「どうするって……」
 そう言って、レッドは口に手を当て、黙って考え込んだ。



 最近よく夢を見る。それはいつか、この仲間たちと離れ離れになる夢だ。
 それを見る度にオレは、とてつもない悲壮感と、孤独感と、とても深くて暗い絶望に襲われる。
 人と人との間に、別れが来ないなんてことは絶対にない。
どんなに親密な仲になろうとも、どんなに長い間共に過ごそうとも、
いつかは別れてしまうもの。これは、努力してどうこうなるものじゃない。
そう、どうしようもないことだ。
 そんなことは分かっている。だけど、それでも、いつか皆と別れてしまうと考えると、
たまに、何とも言えず不安になる。
 そのくらい、このムチャクチャで、くだらなくて、騒がしくて、
そしてとても楽しい毎日が、オレの中で大切でかけがえの無いものになっていた。



 レッドは真剣な顔でまだ考えている。
 こいつとも、いつか会えなくなる日が……。
いや、もうこんなことを考えるのはやめよう。
どうしようもないというのは、もう分かりきっている。
「……バカな事聞いてすまねぇ。もういい……」
 そう言った途端、レッドは何か閃いた顔をして、手のひらをパンっと合わせて、
明るく言った。
「そうだ!!その時はさ、また何か始めようよ!!」
「……何か?」
 まさかこの質問に、こんなに前向きな答えが来るとは思ってなかった。
今度は、オレが呆けた顔をする番になった。
「そう、終わっちゃったなら、また始めればいいんだよ!
 例えばさ、皆六十過ぎの老人になっちゃたとしたら……
 ほら、よくシルバーなんとかっていう、おじいさんおばあさんの集まりとかあるじゃん。
 それみたいに、"リコピン戦隊シルバーカロチン"とか作ったらどうかな?
 まあ、できる活動といったら、近くの公園のゴミ拾いくらいだと思うけど……」
 オレの顔を真っ直ぐ見て、レッドはイキイキした顔でそう語る。
「……別れ別れになっても、またそういうふうに皆に会えっかな……」
「会えるって!というよりさ、絶対に会おう!!ねっ!」
 レッドは満面の笑顔で、そう言いきった。
「…………」


 オレはたまに、こいつにはリーダーの資質というものがあるかもしれない、と思う時がある。
たしかにこいつは力が強いわけでもないし、頭がすごくいいわけでもない。
だけど、こいつはなんでも真剣に考える。
そして、よどみの無い目で、自分の意思をはっきり相手に伝える。
そうされると、こいつのこの眩しいほどのストレートさの前では、
どんな奴のどんな悩みでもパッと消えうせてしまう。
 オレ自身も、こいつが絶対に会えると言うと、
不思議と本当にそうなるんじゃないかと思い、
今までこんなことで悩んでいたオレがバカらしく思えてくる。


「……えーと、何か変な事言ったかな?ボク……」
 オレが黙りこくっていると、レッドがまた心配そうな顔になってきた。
「いや、ただ……お前がリーダーでよかったなぁ。って」
「本当に!?」
 レッドの顔がパァっと明るくなり、そして照れているのか少し顔が赤くなる。
「なんか、嬉しいな……そう言ってもらえると……」
 ……いけない!早く掃除してブルーの看護しなきゃ。すっかり忘れてた……」
 慌ててそう言って、ロッカーの上の雑巾を取ろうと、
レッドは精一杯爪先立ちしながら、背伸びをする
「おいおい、オレがやるから、お前は休んでろって」
 オレが部屋に連れて行こうとするのを、レッドが手で制する。
「もう、だいじょーぶだって、このくらい!!」
 そう言って、また雑巾を取ろうと腕を一生懸命伸ばす。
 こいつが一度言い出したら聞かない奴だ、ということくらいは、
仲間みんなが承知していることだ。
 本当はゆっくり休んでもらいたいが、ここで無理矢理寝かしつけても
すぐにベットから抜け出してしまうだろう。
 まったく、本当に仕方ないやつだ……。
「……そういえば、よっと……もしベータが……う〜ん、
 無くなっちゃったら……あっ、もうちょっと……てのはもういいの?」
 レッドはさっきからがんばっているが、雑巾に指が引っかかりもしない。
「もういいよ、もしそうなっても、また会えるんだろ?……っと」
 少し背伸びをしたら、結構余裕で雑巾に手が届いた。
 よく人から「背が低い」とか、「その年でその身長はないだろ」とか、色々言われているが、
一応レッドよりは背が高い。 
「ほらよ」
 そう言い、いかにも気に食わなさそうな顔をしているレッドに手渡す。
「……ピンクに先に取られた……」
「な、なんだよ!せっかく取ってやったのに!」
 そう少し怒鳴ったら、しかめっ面をしていたレッドが、なぜか笑顔になった。
「……よかった……」
「あ?何がだよ……」
 レッドはオレの問いにすぐには答えず、バケツの取っ手を手に持ち、
手渡した雑巾をそこに入れ、今度はそれをオレに手渡す。
「ピンクが元通り元気になって!!」
 レッドは本当に嬉しそうな笑顔でそう言った。
……そう言うレッドは、オレ以上に元気いっぱいになっているが。
「ああ、そうだな……で?このバケツはなんだ?」
「あ……ゴメン!水汲んで雑巾絞ってきて!!
 ……ていうか、手伝ってくれる……?」
 レッドは申し訳なさそうに言うが、いかにも手伝って欲しそうな顔をしている。
「いーぜ、別に水汲みくらい」
 バケツを肩にかけてそう言うと、レッドは嬉しそうに、思いっきりバンザイした。
「やった!ホントにいつもありがとね!!
 この調子で、これからもよろし……」
 そこまで言って、レッドは慌てて口をつぐんで、少し怯えたような目でオレの顔を見る。
どうやら、さっきのことを気にしているらしい。


 ……もう、大丈夫だ。
もしもいつか今のこの時が終わってしまっても、また新しく何かが始まるのだから。
また、こいつらに会うことができるのだから。
「……はいはい、これからも、ずっと、よろしくな」
 そう言ってやるとレッドは、今日一番嬉しそうな笑顔を見せた。
「……うん!」
 オレも少し笑って手を振ってから、バケツ片手に部屋を出る。


 ……これが終わったら、帰って来る奴らのためにバスタオルでも用意しとくか……。
ふとそう思ったが、どうやらその必要はないらしい。
 廊下の横の窓を見ると、さっきまでの土砂降りが嘘のように止み、
分厚い雲の間から、少しずつ光が差し込んでいる。
 ……まるで、今のオレみてーだな……。
 そんなことを思いながら、だんだん明るく照らされていく廊下を、
バケツを振り回しつつ一人歩いてく。


09.2.4


……実は松葉ヒロさんのカロチン150発足祝いに、
イラスト も描かせていただいちゃいました。