various wordのfuhさんに、
ベータカロチンのキャラで小説書いていただきました!
コメディコメディしてて、めっさ面白いです!><///
本当にありがとうございます!!


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「あっち〜……10月の陽気じゃねぇだろこれ……」
本屋からの帰り道、照りつける太陽を背に大通りを歩く。
「まあいいや、早く帰ってハーゲン食お……」
暑い中頑張った自分へのご褒美に、今日は奮発してハーゲンを買った。足早に歩いていくと、どこからか聞き慣れた声が聞こえてきた。
「いい? 二人とも、恨みっこなしだからね?」
ふと声の方を向くと、思った通りそこにはレッドの姿があった。
ただ想定外だったのは、レッドの横にイエローとブラックがいたことだった。今までに見たことがない組み合わせだ。そして、三人とも神妙な顔をして立ち尽くしている。
「……どうしたんだよ、お前ら」
何事かと思い、三人に話しかけてみる。
「おやピンク君、こんにちはなんだなぁ」
「あら、久しぶりね」
イエローはいつもの軽い感じで、ブラックはいつもの何を考えているのかよくわからない笑顔で返事を返してくる。だが、どことなく緊張している雰囲気が二人から伝わってくる。
「あ、ピンク! ちょっと待ってね、今、とても大事な瞬間なんだ……!」
レッドの顔も真剣そのものだ。
一体何事だろうか、ここまで真剣な3人は数えるほどしか見たことがない。ブラックに至っては初めて見る光景かもしれない。
何がこいつらの心をここまで掻き立てるのか。三人の真摯な眼差しの先を目で追う。そこにあったのは……。
「……ガシャポン?」

『仁義なき三百円の戦い』

「むむ、ピンク君、もしやこの「ミラクルファイターズ」のことを知らないんだなあ?」
「みら……? アニメか? オレアニメあんま見ないからなあ」
「えぇ!? そんなあ、すっごく面白いよ! 「ミラファ」!!」
そう言って、レッドがオレをガシャポンの前へとグイグイ押し出す。
確かに、ガシャポンの機械には、派手なフォントで「ミラクルファイターズ」と印字されている。一回三百円で、写真を見る限りキャラのチャーム付きキーホルダーが三種類収録されているらしい。
「僕のイチオシは彼! 正義のヒーロー「レッドファイア」! 秘剣ファイアブレードで敵をなぎ倒し、ピンチの時は巨大ロボ「ファイアガジェット」が出現!! すっっごいかっこいいんだ!!」
赤い全身スーツを来たキャラを指差して、レッドが生き生きと語り出す。
「いや、別にオレ興味ないし……」
「ふふん、レッド君はまだまだお子ちゃまなんだなぁ」
レッドのセリフを聞いてイエローはずずいと身を乗り出し、ピンク色のフリフリした服を着たキャラに向かって指を突き出した。
「「ミラファ」と言ったら彼女! 「マジカルクノイチ」たんなんだな!! 魔法と忍法を駆使して可憐に悪と戦う! 可愛いらしいキャラデザインや、声優の熱演はもちろん、作画枚数約5000枚にも及ぶ変身バンクは必見なんだな!!」
「いや興味ないって。へんしんばんくとか言われてもわかんねーし……」
てかヒーローにロボに魔法少女に忍者とか、どんたけ属性てんこもりなんだよこのアニメ。
「ふふ……そこまで言われては私も黙ってられないわね」
熱弁する二人を見て、ブラックもこの推しキャラ合戦に身を乗り出し、黒い軍服のようなものを着たキャラを指差した。
「いやだから興味ないって言っ」
「私が紹介するのは彼、「ブラッドジェネラル」よ」
……こっちのことはおかまいなしですかそうですか。
「元帝国軍だった彼は裏切りに会い軍を追われる。それで、彼は復讐を誓い、その血に流れる吸血鬼の力を使い反乱軍の中で暗躍するのよ」
帝国とか吸血鬼とかまで出て来ちゃったよ。収集つくのかこのアニメ。
「……てか意外だな。レッドやイエローはともかく、ブラックもアニメ見るんだ 」
「結構面白いわよ? それにブラッドジェネラルは人気が高いから、バッグにキーホルダーとか付けてると子供達が『いいなぁ〜……』って目で見つめてくるのよ。それが面白くて面白くて」
……まるで子供達を見て「元気一杯に遊んでて微笑ましいわ」と言ってる母親のような朗らかな笑顔でそんなことをのたまってくる。いつものことながら、恐ろしい女だ。
「……まあ、とにかくお前らはこのガチャ目当てでここに集まったわけだ。だとしたら、あの妙な雰囲気は一体何だったんだ?」
そう言った途端、キャラ談義で盛り上がっていた空気が一気に静まり返った。
「……実は問題があるんだ……」
真剣な顔をしてレッドが切り出してくる。
「問題……?」
「そう、問題というのは……」
ブラックが髪をかきあげ、そしてまっすぐこちらを見てゆっくりと口を開く。
「……私たちの財布の中には、硬貨が百円玉一枚ずつしかなかったのよ」
「……はあ。百円玉が。一枚ずつ」
「そうなんだな。ボクらがガチャを引けるのは、たった一回ということなんだな……」
「……まあ、一回三百円だし、そりゃそうだよな」
「そこで僕らは協定を結んだんだ……ガチャを引いて出て来たキーホルダーが、自分の好きキャラだった場合それを手にすることができると……」
レッドはそこで一息置き……
「……つまり! 誰が「ミラファ」のキーホルダーを手に入れられるかは、この僕のガチャを回す手にかかっているんだ!」
……背景に集中線が出そうな勢いでそう言い切った。
「……そうか……そういう事情だったのか……」
すこぶるどうでもいい真相に、思わず顔に手を当てる。それを見たレッドは、したり顔でうんうんと頷く。
「わかってくれるよね……僕にかかるこの重責を……この身に降りかかる苦悩を……」
すまんレッド。微塵たりともわからない。今オレに降りかかってる苦悩は、ベータカロチンの会議でもそうそう見たことないレベルの仲間のマジ顔を、一回三百円のガチャガチャの前で見てしまっているという事実だよ……。
「……てか、小銭が足りないなら、ゲーセンとかでお札崩せばいんじゃね?」
「ダメなんだな、ピンク君。それはとても危険すぎるんだな」
「そうよ、一度そんなことをしてしまったら最後、財布の中の紙幣が全て百円玉に変換されるのがオチよ」
「はあ……恐ろしいんだな、ガチャって……」
「……さあ、いつまでもこうしてはいられない。もうお金はガチャに入れてしまった。今こそこのレバーを回す時!」
そう言って、レッドはガチャのレバーを力強く掴む。ガチャ一つ回すのにどんだけ気合い入れてんだよ。
「頑張ってね、レッド」
そう言って、ブラックはレッドの肩にそっと手をかける。
「うん、頑張るよ! まさか、ブラックがここまで応援してくれるなんて……!」
「あら、これはブラッドジェネラルが出るようにっていうおまじないよ?」
「ひ、ひどい! そこまでするならブラックが引いてよ!」
「れ、レッド君! こういうのは一気にやってしまうんだな!!」
「わ、わかった……! とぉうりゃあっ!!」

レッドの掛け声とともに、レバーが勢いよく右に曲がった。そして、ガラガラという音に合わせガチャの中のカプセルが動き……一つのカプセルが取り出し口に落ちてきた。
「よ、よし! 中身は……」
レッドが素早く取り出し、軽く力を加えると、パキャッという音とともにカプセルが開いた。そしてレッドが中身を確認すると……
「……なんてことだ……」
と言って固まってしまった。
「ど、どうしたんだな? レッド君」
「もしかして、欠陥品でも入ってたの……?」
「ち、違うんだ……これを見てよ!」
そう言って振り返るレッドの手の上に乗ったキーホルダーを見ると、イエローとブラックも固まってしまった。
そのキーホルダーは、赤の服のキャラのでもあり、ピンクのキャラのでも、黒のキャラのでもあった。というのも、キャラ三人のチャームが一つのキーホルダーについているのだ。
「こ、これは……」
「幻の、「主人公集合」……シークレットなんだな!?」
「ど、どどどどどどうしよう!?」
「そ、そんなにすごいのか? これ」
「すごいも何も、「ミラファ」ファンの誰しもが欲しがってる超レアアイテムなんだな!」
「オークションでも高値で取引されてる代物よ……」
「……「全員集合」だと、推しキャラ出た人おめでとう協定が機能しない……一体これは誰の手に……」
漂っていた緊張感が、予想外の展開に更に高まった。
……いや、キーホルダーが誰のものかなんて……
「そんなの」
「ここは! 公平にじゃんけん勝負なんだな!!」
オレのセリフを遮って、イエローが大声を出して提案する。
こいつ……もしかしてオレが『一番年下のレッドに譲るべきだろ』って言うのを察知して……!? 大人気ないとは思ってたが、よもやここまでとは。そこまで欲しいのかよマジカルクノイチ!
だが、イエローはともかく、ブラックはまだ大人気があるほうだ。きっと止めてくれるに違いないー
しかし、ブラックはまるで新たなおもちゃを得た子供のような無邪気な顔で言った。
「あら、良いわねそれ面白そう」
ダメだ、大人としての面子より面白さのほうが勝りやがった……!
「わかった! その勝負、受けて立つよ!!」
そして受けて立っちゃったよレッド……! こいつ本当に真面目すぎるというか、素直すぎるというか……。
「ごめんピンク、これ預かってて!」
そう言ってレッドは俺の手の上にキーホルダーを置いて、大人気ない2人に立ち向かっていく。
「さあ、泣いても笑ってもこれが最後なんだな……」
「さいしょはグー、よね?」
「もちろんさ! さあ、行くよ!」
向き合う三人が同時に拳を構え
「「「じゃん! けん!!」」」
そして、その拳が、今突き出されー

「うわあ! すごい!シークレットだっ!!」

ーずに止まったのは、俺の手の上にあるキーホルダーに目を止めた少年の声をみんな聞きとめたからだった。
「すごいすごい! ぼく初めて見たよ!!」
通りがかった小学校低学年と見られる少年は、漫画だったらキラキラという効果音が出そうなほどの眼差しでキーホルダーをガン見してくる。
「……えーっと……」
どうしたらいいのかわからず、三人組の方を向く。
「…………」
三人組もこの状況にどうしたらいいのかわからないようで、拳を構えたポーズで固まっている。
「いいな〜…….すごいなあ〜……」
そうしてるあいだにも、少年はその目にシークレットキーホルダーを焼き付けようとするように、キーホルダーをまじまじと見ている。
……三人組に視線を送る。このキーホルダーを巡ってお前らで争うよりも、平和的な解決は……。
「……あげようか? それ」
重い沈黙を先に破ったのはレッドだった。
「え!? いいの!!?」
「……ええ、いいのよぼうや……」
「君が貰ってくれれば、きっとマジカルクノイチたんたちも喜ぶんだな……」
ブラックとイエローも少年にそう告げる。三人とも、今にも泣き出しそうなほど潤む目を、笑って目を閉じて隠している。
「……ほらよ、なくすなよ」
少年にキーホルダーを差し出す。
「やったぁ! お兄ちゃんたち、ありがとう!! 僕、大事にするよ!! 」
そう言って、少年はキーホルダーを大事そうに両手で包み込み、嬉しそうにその場を去っていった。
「「「…………」」」
少年の姿が見えなくなってから、3人組は静かに涙を流し始めた。
「さよならレッドファイア……」
「さよならマジカルクノイチたん……」
「さよならプレミアキーホルダー……」
若干1人から邪念を感じなくもないが、こうしてキーホルダーを巡る三百円戦争は終結した。
そんな姿に呆れながら帰路につこうとした時……俺は気づいてしまった。
三百円くらいしたハーゲンが、袋の中ですっかり溶けてしまっていることに……。
「……さよなら俺のハーゲン……」


おしまい